大量消費社会をテーマにした個人開発のゲームをSteamでリリースしてみた
大量消費社会をテーマにした個人開発のゲームをSteamでリリースしてみた
本日、個人で制作した「Black Cycle」というゲームがSteamにて販売開始となった。こうして文字で書いてみるとたった一行だが、ゲームをひとつ完成させて販売するというのはすごく長い道のりであった。リリースするまでの話はまた後日するとして、今日はせっかくのリリース日ということでこのゲームについて少し書いてみることにする。
ジャンルは三人称のウォーキングシミュレーター。モノが作られては消費され、また新たにモノが作られるという当たり前のサイクルを改めて理解する、といったテーマの作品である。プレイヤーは作り手の立場となり、そのサイクルによって社会が変化する様子を見届けていくという物語だ。政治や宗教、企業など、この世の中には個人ではどうしようもないほど巨大な力があるが、実は私たち消費者という立場も案外強い力を秘めているのかもしれない、というのがこのゲームのメッセージである。
そもそも、このゲームを作るきっかけとなったのは現在通っている大学(ドイツの美術大学でデザイン史の修士課程をしている)での「気候変動とデザイン」という講義だ。そこで、世の中にあるマテリアル(物質とか素材とか)を何でも一つ選んでそれに関するプレゼンをするという機会があった。自分は特にエコに関心があるわけでもなく、これといって注目しているマテリアルなんてものもなかったので、適当に色々と調べていたら、少年が黒煙と共に電子廃棄物を燃やしている写真を見つけた。
世界中で使われなくなったパソコンやテレビなどの電子機器は、「リサイクル」という名目で先進国から発展途上国へと違法に取引されている。電子廃棄物というのは、中に貴重な金属であるレアメタルが含まれており、ガーナなどではそういった資源を劣悪な環境下で取り出して生計を立てている。
こういう問題を目にしていつも思うのは、正直とてもじゃないけど解決できそうにないということである。モノを作る側はリサイクルするよりも新しい製品を作って販売する方が儲かるし、この資本主義社会では避けられない問題なのかもしれない。それに、実際に環境負荷の面で比べると、リサイクルでどうこうできるレベルというのはせいぜい数十%程度で、環境汚染の大半はモノを作る製造過程で発生している。そこで、モノを作っている上流の過程に何か影響を与えることはできないかと考えた結果、このゲームが生まれた。
なんだか堅苦しく聞こえてしまったかもしれないが、ゲーム自体はただ3D空間を歩くだけのシンプルなもので、長くても20分もあれば終わると思う。映像だったり小説だったりと、物語の表現形式は色々あるが、こういったテーマとゲームの相性というのを知りたくて、実験的に作ってみた作品である。イソップ寓話のアリとキリギリスでも読むくらいの気持ちで、気軽にプレイしてもらえればと。
2022/12/06