Steamでゲームをリリースして起きたこと、感じたこと

 
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Steamでゲームをリリースして起きたこと、感じたこと

 
 
今から約2ヶ月前に『Black Cycle』という個人開発のゲームをSteamでリリースした。前回はBlack Cycleを作った経緯などについて触れたが、今回は実際にリリースして起こったこと、気付いたことなんかを書いてみることにする。
一生懸命作ったゲームが母に理解されず。
一生懸命作ったゲームが母に理解されず。

プレスリリースとゲームメディア

 
まず、ゲームというのは少し特殊な市場だと個人的には思う。というのも、ゲームが最もよく売れるタイミングというのはリリース時であるということ。Steamのアルゴリズム的にも、ゲーム業界の人間からしたら「そんなの当たり前だろ」と言われるかもしれないが、例えば小説なんかはゲームよりはじわじわと売れるだろうし、出版社側もそんなに発売時に重きを置いてないように感じる。
 
まあ、例外もあるしあまりピンとくる例えでもなかったが、要はゲーム開発者にとってリリース時が最大のチャンスであるということだ。具体的に言えば、プレスリリースを送るということ。正直売れることを考えて作ったゲームではないし、どうせ送っても相手にされないだろうと考えたが、誰にも気付かれないのは意味がないなと思ったので、4つのゲームメディアに送ってみた。
 
するとAUTOMATONIGN JAPANに取り上げてもらった。さらには、プレスリリースを送ってないGamesparkにも取り上げてもらっていた。しかもそれがどこよりも早く記事になっており、ゲームライターの方の嗅覚と仕事の速さには驚かされた。
 
事前に調べた情報だと、自分が送った内容をそのまま載せられる場合もあるとのことだったが、ライターの方がそれぞれとても丁寧で興味をそそられるような紹介をして下さった。IGN JAPANに限っては、プレスリリースというよりBlack Cycleを中心に、資本主義や気候変動を扱うビデオゲームにおける現状や課題などについてとても丁寧に書いていただいている。(葛西さん、ありがとうございます。)
 
僕は結構こういう記事を読んで昔のゲームを知ったりするので、いつか誰かが「気候変動や社会問題をテーマにしたゲームないかなあ」と検索したときに、これらの記事にたどり着いてくれれば幸いである。
 

韓国で展示

 
なんと驚くことに、先ほどのIGN JAPANの記事をきっかけにBlack Cycleが韓国で展示されることになったのだ。
 
「Youtubeで俺たちのコミュニティに向けて配信したいから無料のキー送ってくれよ」という詐欺メールに紛れて、”I just read your game's article from Kasai san and I really excited for that I met the game like Black Cycle.(葛西さんの記事読んだけど、Black Cycleめっちゃええやん)”といった感じで、自身が主催する韓国でのゲームの展示会に出展してくれないかという内容のメールが届いた。
正直、日本語以外のメールは基本的に詐欺だと判断して無視していたがKasai sanと書いてあって、Mrじゃなくて「さん」というあたりが、日本文化を知っている感じがしたので返信してみたら、なんとちゃんとした人だったのだ…。(疑ってごめんなさい)
IGDG 2023
IGDG 2023
日本からの出展者はみなとても豪華で場違い感も否めないが、主催者のBae Sang HyunさんがとてもBlack Cycleを気に入って下さったので、リモートという形で出展することになった。ドイツから韓国の航空券を一応調べてみたら15万円以上したので、さすがに現地入りは叶わず。ゲームを遊んでくれた人と、色々感じたことなんかを雑談混じりで話してみたかったが、とりあえず一人でも多くの人に遊んでもらえる機会を頂けたので、感謝の気持ちでいっぱいである。
 

ゲームができる環境

 
このブログを読んでいるほとんどの人は、Steamのゲームをプレイすることができる環境を持っていると思う。もちろんゲームを作っている僕もRTX 3070を搭載した自作PCを持っているわけだが、それが一般的かというとそうではないと思う。2022年9月のAUTOMATONの記事で、Steamの日本人ユーザーの人口が約52万人ほどと計算されているが、ここでは別に数字の話をしたいわけではない。
 
今まで30年近く生きてきた中で、Steamでゲームをしているという人間を一度たりとも見たことがない。なんなら、僕自身もゲームを作り始める(2020年)までSteamの存在すら知らなかった。というのも実際にゲームを作っている人の多くは、大学の理系か専門学校出身であるケースがほとんどだと思う。しかし、現在僕が通っているのは美術大学(修士)で、さらには元々経営学部(学士)だったので自分のパソコンすら持ってない人も普通にいるという状況だった。もちろん今の美大ではblenderなどを使って3DCGの映像作品を作る人も多くいるわけだが、GPUを搭載したデスクトップPCを持っているからと言ってパソコンでゲームをやるかというと、それはまた別の話になってくる。
 
つまり何が言いたいかというと、個人で一生懸命ゲームを作ったはいいが、友人や家族など誰一人として遊んでもらうことができなかったのだ。
 
(まあ、さすがに両親がSteamでゲームをしていたら逆にビックリしてしまうが…。)友人はみなニンテンドースイッチかPS4のどちらかを持っている人がほとんどで、ゲーム機を全く持っていないという人は体感で3割ほどだと思う。年齢や環境によって人それぞれなので、あくまで僕個人の周りではという話だが。Steamという巨大なプラットフォームで自分が作ったゲームを全世界に向けて配信できた一方で、最も近しい存在である友人や家族には誰一人として遊んでもらえなかったのは何とも複雑な気持ちである。もちろん、画面共有やプレイ動画を送ることはできるのだが、せっかくならゲームとして遊んでもらいたかった…。
 
やはり家庭用ゲーム機は強いんだということを、改めて思い知った。とりあえず今のところは、Switchに移植することは特に考えていない。卒業制作の展示の1つとして実験的に作ったもので娯楽的要素はまるでないし、そもそもゲームなのかアニメーションなのかよくわからない短編作品に需要があるのかどうかわからない。少し手を加えてプレイ時間を無理やり伸ばすようなことはしたくないし、それよりも今はどんどん新しい作品を作りたい気持ちの方が大きい。といっても、まずは4月までに修士論文(英語)を終わらせるのが最優先だが…。
 
 
2023/01/29